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いつでも、ひなたぼっこ アマチュア小説家、冬垣ひなたのブログ。読んだ本や、行ったイベントの感想などを書いています。

『帰蝶と信長 一、蝶は旅立つ』感想

『帰蝶と信長 一、蝶は旅立つ』感想

(しのき美緒:著 まかろんK:イラスト Kindle版電子書籍 2020)

※画像はイメージです

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【あらすじ紹介】

 

時は戦国の世。美濃国の姫である帰蝶は、尾張のうつけと名高い織田信長のもとへ輿入れする。父・斎藤利政(道三)の決めた政略結婚だったが、二人は互いに惹かれ合い仲睦まじい夫婦となった。

嫡男として相応しくないといわれた信長には内外に敵が多い。帰蝶も争いに巻き込まれていくが、持ち前の気丈さと聡明さで夫を助けるのだった。乱世に身を投じながら、帰蝶は一人の女性としても成長していく……。

WEBで活動するインディーズ小説家・しのき美緒が描く、華麗な歴史小説。

第一巻は、帰蝶と信長の祝言から道三の死まで(以下続巻)。


・『帰蝶と信長 二、蝶は闘う』感想はこちら

・『帰蝶と信長 三、蝶は祈る』感想はこちら

・『しのき美緒作品集 軛』感想はこちら



【感想:多少ネタバレあり】

信長の妻であった帰蝶(濃姫)について、恥ずかしながらあまり予備知識しかなく、彼女の波乱の人生を追った本作は、開眼する思いで拝読した。

良家の姫君は、男たちの活躍を描く歴史小説の中では、とかく政略の駒になりがちである。しかし道三の娘である帰蝶は、夫に恋したり、騎乗を楽しみたがったり、綺麗な衣装に憧れたりと、実に生き生きとしている。少女から女性へと成長していく、人間味のある人柄に魅力を感じた。また、戦の間に家を守る帰蝶の采配ぶりに、自ら運命を切り開こうとする逞しさが伺える。

もちろん、史実の物語であるから苦難も待っている。常に敵に囲まれた信長は人としてはまだ未熟で、妻の帰蝶を溺愛してはいるものの、思い至らず親族と反目し合う。信じられる数少ない味方は、信長の才能を買う、情の深い者だけ。そのことが結果的に、戦国武将として活躍する後押しとなっていったのだろう。

歴史上の出来事であるがゆえに、読者は信長の死までも予想できるのだが、筆者の豊かな知識に支えられた巧みな展開が、実に心地よい。戦の多い歴史小説でありながら、たおやかな筆致で読みやすく、登場人物にも感情移入できた。表紙絵も美しく、上品な絵巻物を見ているような気持ちになった。これからの続刊が待ち望まれる作品だ。


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by h-fuyugaki | 2020-04-13 21:34 | 日常エッセイ