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いつでも、ひなたぼっこ アマチュア小説家、冬垣ひなたのブログ。読んだ本や、行ったイベントの感想などを書いています。

『ラジオドラマ脚本入門』感想

『ラジオドラマ脚本入門』感想

(映人社 北坂昌人:著 2015)

※画像はイメージです

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【あらすじ紹介】

映像のあるTVと違い、音と声だけで表現するラジオドラマの世界を、実際のシナリオをテキストにしながら学んでいける脚本術。映像の視覚化に特化した従来の脚本術と違い、聴覚を中心とした五感を用いた叙情的な面こそが、ラジオドラマ脚本の魅力である。

ラジオドラマ界で活躍する著者の経験談を交えながら、脚本の初心者でも分かりやすいよう、シナリオの書き方を丁寧に解説している。ドラマのための自然な台詞やモノローグ、想像力を掻き立てる効果音。映像に頼らないことで気づかされる文章技術も多い。未知の可能性を秘めた、音の世界が垣間見える一冊。


【感想:多少ネタバレあり】

私はシナリオを書いたことがないが、小説の勉強のために脚本術の本を10冊近く読んでみた。通常のシナリオは映像化を前提としているので、当然ながら見た目の表現が重視されていて、これはどの脚本術にも共通していえることだった。

 ところが、『見えない』ラジオドラマは違う。大道具や小道具、俳優の演技で見せる部分を、短いシナリオ内にすべて書かなければならない。いかに不自然さを感じさせず、情報を台詞とモノローグに織り込んでいくか……聴覚に配慮したシナリオは、実に丁寧に作られていることが分かる。

伏線のはり方や構成についてなど、良い脚本を書くためのコツも分かりやすく書いてあり、ところどころに著者のシナリオも載っているので、楽しみながら勉強できるのがいい。聴覚がもたらす情緒的な感覚についても、実際により深く理解できる。特に巻末のシナリオ『プラットホーム』は余韻の残るラストが明るく、すっきりした気持ちで本を読み終えた。

先月、北坂先生の講義を受ける機会があって、サインをいただいたこの本に出会えたことに縁を感じる。また久しぶりに、ラジオドラマを聞いてみたい気持ちになった。




ラジオドラマ脚本入門
北阪 昌人
映人社 (2015-07-23)
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by h-fuyugaki | 2018-10-17 21:50 | 日常エッセイ